noises of photos デジタル時代の写真=写心論考
仮に、ハンマースホイが極端なまでに人間嫌いだったとすると、ハンマースホイの作品の随所に見られる謎が解けそうな気がしてくるのである。
たとえばこの作品だ。
ぱっと見た瞬間、窓を通って入ってくる光の美しさ、またその光を受けて輝く窓の美しさに眼がいくが、しかしこの部屋のとびらには、ドアノブがないのである。部屋の機能の重要ポイントが欠落している。
この部屋は、ハンマースホイによって、何枚も描かれており、作品によってはドアノブは存在している。
そもそも、あれほど大量に描いた女性(妻・イーダ)は、そのほとんどが後姿であって、そういう意味では「顔」が欠落していると言える。やはり重要な要素を、あえて排除している。
もうこうなってくると、絵画鑑賞も楽しいというより苦痛である。心理戦争をやっているのと同じなのだ。